なるほど! ことわざ経営学
餅は餅屋
●戦場:Battlefield のことわざ
●元の意味
餅は、自分でついたものより、専門家である「餅屋」がついたものの方がうまい。専門家の方が何事も上手なものである。
本当にうまく言ったものです。4文字で、いわゆる
選択と集中
を極めて上手に表現しています。
自社のビジネス領域(ドメイン)をどこにおくか、を端的に表しています。
自分でうまくできないことを何とか頑張ってやろうとするよりは、そ
れはアウトソースしてしまえばいいんですね。
逆に、餅屋にとってみると、自分はうまい餅をつくことに集中し、米を育てるのは農家に任せるわけです。餅をつく経験を蓄積させ、そこで勝負すればいい、ということでもありますね。
●餅屋は何を売っているのか?
自分が得意でないことはアウトソースすればいい、と簡単に先ほど書きましたが、ことはそれほど単純ではありません。
餅屋は、何をアウトソースすればいいのでしょうか?
・米づくり? (原料)
・餅作り? (自社生産)
・杵づくり? (生産設備の精算)
・餅のメニュー開発? (企画・開発)
・餅の販売? (チャネル)
餅屋にしても、
・販売にフォーカス(チャネル開発、メニュー提案など)
・生産にフォーカス(うまい餅をつく)
など、色々やりようがあるはずです。
そう、実は、「餅屋」と言っても、戦略によっていろいろやりようがあるんですね。
自分は何屋か、というのは、簡単に定義できるものでも無いんです。
ナイキは何屋さんでしょうか? 靴メーカーですか? でも、自分で靴を作っていないんですよ? ナイキは、靴の生産はアウトソースしています。自分で靴を作らなくとも、靴メーカーと呼んでいいのでしょうか?
これが、「餅は餅屋」の4文字が私たちに投げかけている問いなのです。
●自分は何屋か? は 事業領域(ドメイン)を決める問い
自分は何屋か?
自分は何屋か?
自分は何屋か?
自分は何屋か?
自分は何屋か?
これは、極めて深い問いなのです。
これが、いわゆる「ビジネスドメイン」、事業領域の定義です。
業種業態で切るのは簡単です。
では、果物屋は果物屋なんですか?
同じ果物屋でも、
・手軽に健康:果物ジュースバー、カットフルーツ
・ギフトショップ:華やかな包装でメッセージカードをつける
など、やり方によっては色々やることが変わります。
「健康を売るのか?」
「贈り物を売るのか?」
などの展開を考えると、「果物屋」という業種業態で事業領域を定義することは、多くの場合、非常に危険です。
あなたは何屋か?
戦略BASiCSの「Battlefield」の定義は、結構時間をかけて、真剣に考えなければいけないのです。
●自分は何屋か、は顧客視点で定義するべき
自分が何屋か、はもちろん第一義的には自分で定義するのですが、それだけでは不十分です。
自分が何屋か、は、
「お客様は何を買っているのか?」
と軌を一にしていないといけません。
餅屋の事業領域(自分は何屋か)は、
・小腹が空いたときのヘルシーなおやつ
・みんなが集まったときの、パーティの食材
・餅のおいしい食べ方を教えてくれる
・餅のおいしいつき方を指導してくれる
・餅関連の商品が何でもそろう
など、お客様がなぜその餅屋に行くのか、という認識と一致していな
いといけないのです。
ただ、「餅を売る」では、事業領域の定義として全く不十分なのです。これが、今までの経営戦略論の限界です。逆に、ストラテジー&タクティクスの提唱する、戦略BASiCSの画期的なところでもあるのです。
その「餅」がお客様のどのような悩みを解決し、どのような「ソリューション」になるかを考えないといけないのです。だから、そのようなことを考える「マーケティング」が、企業活動の中で、最も重要なことなのです。
戦場 と 顧客 を一貫させるがゆえに、 戦場 を 顧客視点 で定義するのが戦略BASiCSです。
餅は餅屋。得意なことにフォーカスしましょう。
しかし、何を売るのかによって、餅屋のやり方が全く変わります。
あなたは何屋ですか?
お客様のどんな悩みを解決し、どのようにお客様を応援しますか?
そして、何にフォーカスし、何をアウトソースしますか?
それは、戦略BASiCSのBattlefieldを決める問いであり、自社(あるいは商品・サービス)のドメインを決める、極めて重要な問いなのです。
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